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法政大学「FD学生の声コンクール」 通信教育部在学生受賞作品をご紹介します (1)2013年度優秀賞 文学部日本文学科 小林 けい子さん

法政大学では、教育の質を向上するための組織的な取り組みであるFD(Faculty Development)活動を全学で実施しています。この活動に学生の声を活かすため、「FD学生の声コンクール」として授業・学習に関する内容をテーマに学生からのエッセイを募集し、毎回数十を超える応募の中から優秀作品を表彰しています。FD2013

通信教育部在学生からも授業や学習・学生生活での気づき、体験談を綴った内容の応募があり、2013年度は2点、2014年度は4点の作品が佳作以上に選出されました。

これから通信教育部での学習を検討中の方、在学中の方ともに、学習のヒントになる内容が沢山込められたエッセイの数々を、シリーズでご紹介していきます。

第一弾は、2013年度優秀賞を受賞した、文学部日本文学科 小林けい子さんの作品です。

※2014年度受賞作品は、3月上旬にFDセンターより冊子が刊行されます。【FD推進センターWebサイト

 


 

楽しんでいる人にはかなわない

      文学部 日本文学科 小林けい子

 

  知識のある者は、それを好きな人にはかなわない。

  好きなだけより、それを楽しんでいる人にはかなわない

もってこいの単純な性格。白板に書かれた孔子の『論語』を眺めながら、何とかやっていけそうな気がしてきた。

 

  知之者不如好之者

  好之者不如楽之者

 

実は、この直前まで苦手意識のあった科目をとったことを後悔していた。

地方から交通費と宿泊費をかけて大学に通っていることから、必須科目の7時限だけではもったいないと受講を決めた。理由はこれだけではない。これから社会に出ていく学生と違い、長く生きてきた分いろいろもまれているので、先生の教えを乞い、勉強ができる環境に身をおけることの喜びの方が大きかった。さらに今年の春スクーリングから、日本文学科のみ、通学部の夜間専門科目を受講することできた。このチャンスを逃す手はないと、リポーターの仕事を縮小し、主宰する文学サークルを休止しての通学だった。

ところが、漢字がずらっと並んだプリントを見てひるんだ。こういった『論語』や『孟子』が、ためになるというのは分かっていたが、送り仮名や返り点をつけることなど、とんでもなかった。やめてしまおうか。できることならそうしたい。そんなことをしたら納めた代金がもったいない。通教生は各スクーリングごとに履修科目を登録し受講料を納める。この春から一科目5千円アップした。そんなことが頭の中でどうどう巡りしている。そのとき先生が、この訳文を読んだのだ。

「楽しんでいる人にはかなわない」

この言葉が、すーっと胸に落ち、「頑張ってみよう」やる気スイッチが入った瞬間だった。

それにしても、こんなことが言える先生は、いったいどんな人なのだろうか。肝心の漢文はさておき、そこに興味を覚えインターネットで検索してみた。すると、今春三月の学位交付式の動画があり、先生が祝辞を述べていた。

「悩みごとを抱えたときは、別の物差しで考え直せば新しい道が開けます。本当に苦しいときは、大きな口を開けて無理にでも笑い正気になって、二つの物差しで考え直してほしい。いまが一番苦しいときと思い、諦めないでチャレンジしてください」

そして、先生自身の体験を語った。

「二十代が一番苦しかった。大げさに言えば、死に近い状態でした。しかし、三十代に入ると少し楽になり、四十代になると楽しくなってきました」

同じ女性でありながら、自分のことをこんな風に謙虚に、そして素直に言える先生の純真さに感激した。

私が大学に入ったきっかけも、「人間とはなんぞや」と悩みに悩み、生きていくすべを求めてのことだった。「もう二度と人なんて信用しない」。心を閉ざしていた日々だったが、そんなことにこだわっていた自分が、とてもちっぽけに思えてきた。

そう悟らせてくれた先生のことが好きになり、授業が楽しみになっていった。気づいたら、出席カードのコメント欄に、相談ごとまで書いていた。授業後、先生から声をかけられ、話を聞いてくれたときは本当に嬉しかった。ときに教材のプリントをはなれた『論語』を学べた。それによって、人生を考えることができたり、自分に自信がもてるようになった。

そして七月の試験。予想外の評価をいただけた。けっして優等生というわけではない。どの問題が出てもいいように、発表された範囲を、何日もかけて一語一句、丸暗記した。それを苦痛とも思わず楽しめたのは、「知らなかったことは恥ずかしいことではない、気づいたその時から学べばいい」と、孔子の声が天から聞こえたからだ。

 

  知っているということを知る  知之為知之

  知らないということを知る   不知為不知

  それが知るということ     是知也

 

 「楽しんでいる人にはかなわない」

 呪文のように唱え、今日も校舎に入る足は弾んでいる。

 

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