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法政大学「FD学生の声コンクール」 通信教育部在学生受賞作品をご紹介します (4)2014年度佳作 文学部日本文学科 小林 けい子さん

法政大学では、教育の質を向上するための組織的な取り組みであるFD(Faculty Development)活動を全学で実施しています。この活動に学生の声を活かすため、「FD学生の声コンクール」として授業・学習に関する内容をテーマに学生からのエッセイを募集し、毎回数十を超える応募の中から優秀作品を表彰しています。FD2014

通信教育部在学生からも授業や学習・学生生活での気づき、体験談を綴った内容の応募があり、2013年度は2点、2014年度は4点の作品が佳作以上に選出されました。

これから通信教育部での学習を検討中の方、在学中の方ともに、学習のヒントになる内容が沢山込められたエッセイの数々を、シリーズでご紹介していきます。

第四弾は、2013年度優秀賞に続き、2014年度は佳作を受賞した文学部日本文学科 小林けい子さんの作品です。

※2014年度受賞作品は、3月上旬にFDセンターより冊子が刊行されます。【FD推進センターWebサイト

 


 


散文 『新選 総合漢字問題集』が教えてくれたこと

      文学部 日本文学科 小林けい子

 

冗談じゃない。こんな漢字書けなくたって生きていける。覚える必要はなんなのよ。不満たらたら、テキストの『新選 総合漢字問題集』をめくっていった。

書き取り問題は二千以上ある。三回にわけてテストするにしても、一回に七百以上も覚えなくてはならない。逃げたい。だがこのスクーリングは、週末を利用した三日間の集中講義で、論文の書き方を指導してくれる。必須の卒論にそなえ必要な科目だ。受講には否応なしに漢字テストがついてくる。社会に出てかなりの年月が経つが、まさかこのようなことに遭遇するとは思いもしなかった。ため息ばかりついていても何の解決にもならない。頭の中で計画を立ててみる。

受講日まで二か月近くある。一日一ページやればいい計算だ。そう考えると気が楽になり、空き時間に練習をはじめた。ところが、三日ほどして前のページに戻ると、なんと忘れているほうが多い。とにかくレベルが高い。新聞でも目にしないような漢字をまえに、二つ覚えては三つ忘れるというぐあいだ。年齢のせいにしたくないが、記憶を維持することに限界を感じた。間際になってから集中してやることに決めた。

 受講三日前、気合いをいれて朝からとりかかる。一ページ目、出来るまで練習する。そして二ページ目、次々と進めていく。一回目の範囲である七百以上やり終え、時計をみると午後四時を過ぎている。お昼を食べることも忘れていた。一時間後には大学に行かなくてはならない。食事をして仕度にとりかかる。大学から帰ってきてからも覚えられなかった漢字をやった。

寝たのは零時過ぎ。膨大な数の漢字が夢にまで現れ、四時には目が覚めてしまった。気になって寝つけない。寝返りばかり打っていても時間の無駄と、思いきって起き上がり机に向かう。昼からはさらに集中していたようで、手元が暗くなって我に返った。コーヒーメーカーにはコーヒーがそのままになっている。飲むつもりで落したのをすっかり忘れていた。こうしてテスト前の三日間、必死で頑張った。

そして当日。早朝四時から本番のつもりでやった。七百以上ある問題は完璧だった。もちろんテストは満点。このように三週とも頑張った結果、いずれのテストも満点だった。何の取り柄もない私だが、このことでいろんなことが自信につながり、さらに学ぶことが楽しくなっていった。これを手にすることができた一つには、地方で公務員をしている夫の理解も大きかった。いずれ、娘家族の近くに住むつもりで用意した住まいに、一足先に上京できたことで勉強に集中できた。

 このように苦労して覚えたものを忘れてなるものかと、新聞、雑誌、ポスターなどに出てくる漢字に目をやるようになった。いや、向こうから飛び込んでくるといった方がいいかもしれない。「これは読めるかい」「これはどうだ」と試されているようだった。読めない字があれば辞書で調べ、繰り返し練習してきた。

そんな自分に満足していた日々、夏のスクーリングがはじまった。授業は、源氏物語など日本古典文学作品の翻訳史がテーマ。先生は外国人でありながら、テキストに出てくる難しい漢字をスラスラ読んでいくではないか。それにルビをふっている私。何かおかしくないか。自分の未熟さを思い知らされ、頭に一撃をくらったようだった。誰もが先生の言葉の流暢さには驚きを感じたようで、学生たちが質問すると「漢字を覚えるのが趣味なんです」と優しい笑顔で答えた。背が高く男前の先生が神様のように見えた。「負けていられない」。沸々とこの気持ちが膨らみ、漢字もまだまだというのに、苦手とする英会話を学ぶことを決断してしまった。あのときの調子で取り組めばいい。勉強のコツはつかんでいる。迷いはない。さっそく、公益財団法人が主催する英会話講座に申し込みをした。

「自分への挑戦」。やれば出来る。『新選 総合漢字問題集』がこのことを教えてくれた。編者である法政大学の先生がたの思いは、こういうところにあったのだろう。はじめて理解することができた。

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