「人生力」を鍛える学びのために大学通信教育ができることとは?~教育のプロから見た、通信教育部で学ぶ意義~ 「人生力」を鍛える学びのために大学通信教育ができることとは?~教育のプロから見た、通信教育部で学ぶ意義~

2015年2月20日、本学教職課程センター長(当時)・尾木直樹教授と、
藤澤利治通信教育部長(当時)による「教育のプロから見た、通信教育部で学ぶ意義」と題した対談を実施いたしました。
日本で最初の大学通信教育課程として、本学通信教育部がスタートして70年近く。
現代日本において通信教育がどのように在るべきか、白熱した議論の模様をお伝えします。
(注:文中の内容およびプロフィール本文は、2015年2月当時のものです)

貴重な学びの場としての、通信教育部貴重な学びの場としての、通信教育部

藤沢藤沢

まずは尾木先生、大学の通信教育部に対する第一印象はどのようなものでしたか?

尾木尾木

高校のときの僕の担任が、通信教育部出身だったんですよね。当時、通信教育部っていうのは社会的な認知度が低かったんですけど、その先生は熱心にいろんなことを勉強されていて、他の先生と比べてむしろ情熱家でした。「通信教育で大学を出て、こんな風に立派な高校の教員になれるんだな」と可能性を感じたのが、通信教育との最初の出会いですね。

藤沢藤沢

私も小学校の担任の先生がやはり通信教育を受けていたんです。しかもまだ現役の学生だったんですね。これまた子どもにも親にも人気の高い先生で。

大学・短期大学などへの現役進学率 (%)

※大学学部・短期大学本科入学者数(過年度高卒者などを含む)を3年前の中学校卒業者及び中等教育学校前期課程修了者数で除した比率(出典)文部科学省「学校基本調査」

尾木尾木

僕が大学を受験した頃は進学率が12~13パーセントぐらいで、女子に至っては4、5パーセントぐらいでした。(注:短期大学などを含まない進学率)まだまだ大学への進学率が非常に低かった時期に、通信という手があるんだな、というのは非常にインパクトが強かったですね。

藤沢藤沢

当時は大学の数が少ないから、地方にとっては非常に限られた学びの場だったんですよね。

尾木尾木

大学の資格がほしいだけでというよりも、「学びたい、仕事の役に立てたい」っていう要求を満たす重要な場所で、今よりも目的意識がはっきりしていたと思いますね。

豊かな社会だからこそ、学びの多様性が大切豊かな社会だからこそ、学びの多様性が大切

藤沢藤沢

かつての通信教育部は貧しい社会における救済措置という面が強かったと思うのですが、今は豊かな社会だからこそ通信教育部が必要なんじゃないか、と思うんです。

尾木尾木

成熟した国家になってきたら、学びの多様性は必然的な要素だと思うんですよね。安定した民主主義だからこそ、それぞれの多様な学びの要求に応えていくことがカナメだと。特に法政は「自由と進歩」の伝統がありますからね。

藤沢藤沢

日本で初めて通信教育部ができたのも法政大学ですので、我々が若い人たちに教育の機会を保証しないで誰がやるのか、という気概があります。ところで、今の20歳前後の若い人たちにとって、通信教育部の意義はどういったところにあると思われますか?

尾木尾木

高校の通信教育の場合、高卒の資格は就職のためにどうしてもほしい、という強い要望があるわけですよね。大学はまだそれほどではない。でもね、潜在的な需要はすごくあると思います。やっぱり、学ぶということで生き方が自由になるし、世の中が見えてくるんですよね。高校時代までのテストや進学のための勉強ではなく、本当の学ぶ喜びを味わえるわけです。

通信教育でも、フェイス・トゥ・フェイスの関係を大切にすべき通信教育でも、フェイス・トゥ・フェイスの関係を大切にすべき

藤沢藤沢

一時期はネットを使った学びの場として、e-ラーニングも相当脚光を浴びました。そことの差別化についてはどうお考えですか?

尾木尾木

やっぱり通信教育部の良さは、スクーリングなどを通じたフェイス・トゥ・フェイスの関係があることだと思うんです。

藤沢藤沢

一方で、人と接するのが苦手だから、対人関係がなくても大丈夫な通信教育部に来た、という学生もいますよね。特に若い学生です。そうした問題を抱えて就職や進学ができない人というのは、増えているんでしょうか。

尾木尾木

ものすごく増えていますよね。いじめのトラウマなどで対人恐怖的な傾向を持ってしまって、高校でいわゆる不登校になったりする。スクーリングに来られない人に対する理解が、我々にも要るんじゃないかという気はします。

藤沢藤沢

授業に出る学生の中にも、「人前で話すのが苦手なので当てないでください」という学生がいましてね。でも、試験をしてみると成績が悪いかというとそんなことはないんですよ。

尾木尾木

学生のありのままを認めていくという丁寧な対応が、我々に必要なのかもしれません。

藤沢藤沢

フェイス・トゥ・フェイスの魅力について話を戻しますと、まずはレポートの添削などを通じて、学生に対して「やればできる」と自信を持ってもらう。そしてせっかくなんだからスクーリングに出て友だちを作って、自分の置かれている状況や悩みを話し合ってみようよ、と促す。これはe-ラーニングにはなかなかできないことなんですね。

尾木尾木

どんなにネットが発達しても、敵わない強みだと思います。

藤沢藤沢

人間形成っていうのは、やはりフェイス・トゥ・フェイスで培われるんでしょうね。

学部と同等レベルの教育が、社会を生き抜く力につながる学部と同等レベルの教育が、社会を生き抜く力につながる

藤沢藤沢

法政の通信教育部の魅力はどこにあると思われますか?

尾木尾木

まず、学びの質は学部と比べて何ら遜色はありませんよね。通学課程と同じ教授が担当するわけですし、むしろフォロー体制の丁寧さは勝っているかもしれない。そして、現在通信教育部で学んでいる人に伝えたいのは、ある程度単位を取得した時点でそれまでの何年かを振り返ってみて、自分の成長した側面を見つけてほしい、ということです。たとえば新聞の読み方が変わったとか、勤めている会社の課題がわかったとか。やっぱり視野が広がって真実が見えるようになり、生きる力が身についているはずなんですよ。

藤沢藤沢

なるほど。説明会に参加した学生の中には、「自分は何か勉強したいんだけど、何を勉強したいのかわからない」という人が多いんです。それをどうお考えになりますか?

尾木尾木

大学に行って何かを学びたい、という人には、たとえば僕が携わっているキャリアデザイン学部においで、と伝えたいですね。今は、弁護士や医者になったからといって必ずしも幸せになるとは限らない時代。だから「模索する4年間でもいいじゃないか」、という構えなんですよ。

若い人にも、職場で苦しんでいる人にも、「人生力」を鍛える場を若い人にも、職場で苦しんでいる人にも、「人生力」を鍛える場を

尾木尾木

今は無数の職業や働き方がある時代ですから、大学では自分というものをつかんだり、自己肯定感を持てるようになることがより重要ですよね。人生を開拓する力――「人生力」を鍛えていく学びです。その点では、通信教育部の学生は通学課程の学生より有利な側面もあります。自分の社会生活と結びつけながら学ぶことで、学びの質がものすごく凝縮されたものになるんです。しかも、通学課程と比べたら費用はうんと安い。日本でも「ブランド大学を出ればなんとかなる」みたいな学歴社会から、大学で何を学んだのかが重視される「学習歴社会」に変わりつつあります。人々が持っている本当のパワーを十分に出し社会に生かすためにも、通信教育部の学生には期待したいですね。

藤沢藤沢

我々も、これからの日本を背負うような人たちを支えたいと考えています。

入学者の志望動機

2014.12.1 現在

尾木尾木

今、経済的な困難が理由で大学進学をあきらめたという人が70%を超えています。経済格差が教育格差に直結してきたんですよ。そういう中でも、あきらめずに通信教育部でがんばってみてほしい。

藤沢藤沢

学ぶ喜びを、若い人たちにも職場で苦しんでいる人たちにも、もっと示していかなければならない。そこが我々の一番の課題ということになりそうですね。

法政大学教職課程センター長・教授 尾木 直樹 Naoki Ogi
1947年滋賀県生まれ。臨床教育研究所「虹」所長。中高の教師として、22年間子どもを主役としたユニークで創造的な教育実践を展開。最近は「尾木ママ」の愛称で親しまれ、Eテレ「ウワサの保護者会」やフジテレビ系「ホンマでっか!?TV」、日テレ「シューイチ」など多数の情報・バラエティ・教養番組やCMでも活躍中。著書に『親子共依存』(ポプラ新書)など多数。
法政大学通信教育部長 藤澤 利治 Toshiharu Fujisawa
1950年福島県生まれ。新潟大学教員を経て、2000年4月より法政大学経営学部に着任。前・通信教育部長(2014年4月~2017年3月)。専門はヨーロッパ経済論、ドイツ経済史。

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